1. HOME
  2. Blog
  3. 労務相談室
  4. 第68回  退職金計算基準

セミナー情報・ビジネスガイド

Seminar・Business Guide

労務相談室

第68回  退職金計算基準

第68回  退職金計算基準

 コストダウンが急務の企業において、退職金計算を視野に入れた賃金体系の見直しのご相談を受けることが出てきました。定年退職金が他国より多いと言われるインドネシアにおいて、できるだけ退職金計算に含まれない支給方法の工夫などを検討することは、退職金引当金なども含め、大きなインパクトがあります。

【退職金計算の基準】
 退職金は月額定賃金Upah Tetap をもとに計算します。月額定賃金とは毎月定額で受領する賃金を言い、基本給 Upah Pokok と定額手当Tunjangan Tetap からなります。基本給は月額定賃金の75%以上を占めていなければならず、基本給がないというのはあり得ない上、社員の注目度も高いので、 基本給の減額等によるコストダウンの検討はほとんど見られません。
 一方で定額手当は毎月定額で支給され、勤怠や成果等の影響を受けずに支給される手当をいいます。月額定賃金の最大25%を占めるこの定額手当を何とか別の形に変え、退職金計算に含まない形にできないかを検討する会社があります。手当をなくすという極端な策を取られることは少なく、支給方法を変更することで、毎月の支払いには影響がないが、退職金計算に含まれないようにする工夫はいくつか考えられます。

【あの手この手の対策】
 月額で定額ではなく、1 日当たりの金額を設定し、出勤した日数分だけ支給するという方法に変更すると非定額手当になりますので、退職金計算の基準には含まれません。ただ、特定役職の職責を負うことに対する役職手当や扶養家族に対する補助としての家族手当、住宅費用の援助としての住居手当などを勤怠と関連づけるのは手当の意味から考えると少しこじつけ的に見え、社員の会社に対する不信感を生じさせる可能性があります。
 一方、現物で支給するとこれは賃金の一部ではなく、便宜Fasilitas となりますので、これも退職金計算の基準には含まれません。たとえば特定役職者以上に支給する交通手当を車両の貸与に変更するとか、住宅手当ではなく社宅を準備するなどの方法ですが、逆に現物を提供することによって発生する管理費や手間なども配慮する必要がありますし、状況によっては現物支給が所得税の課税対象となりますので、条件をしっかり確認する必要があります。
 非常に極端な例としては、定年退職前の一定期間を「引継ぎ期間」と設定し、引継ぎに集中させるために組織の中の役職を解任することによって、役職手当や特定役職に伴う交通手当や住宅手当の支給を止めるという対策をする会社があります。退職金は退職日の賃金を基本に計算しますので、退職前に支給を停止すれば当然退職金計算には反映されないということになります。ただこの対策は特に高額な手当を支給されていた、高位の役職に就いている社員に対してインパクトが大きく、退職前に社員を不快にすることになりますので、会社に対する不満が爆発する可能性もあります。定年退職まで⾧く勤務した社員を大切にしない社風は在籍している他の社員にも影響を及ぼしますので、コストダウンはできますが、互いに信頼し、尊重する労使関係の悪化を招く可能性がありますので、配慮が必要です。

Related posts